COLUMN

【スペシャル対談】環境にも身体にもやさしい家事とは ゲスト:髙橋 百合子氏〈イーオクト株式会社 代表取締役〉

2025.03.21
Topics・トピックス

お家をきれいにするために様々な洗剤や掃除道具が売られていますが、場合によっては環境や身体にダメージを与えてしまう可能性があることをご存知でしたか?
 

そこで今回はスペシャル対談として、サステナブルな暮らしを提案するイーオクト株式会社、代表取締役の髙橋百合子氏をゲストにお迎えし、『環境にも身体にもやさしい家事とは』をテーマに、ミッシェル・ホームサービス代表、大坂みゆきと語り合いました。
 

 
 

サステナブル、デザイン、ファンクション
三拍子揃った製品で“ひとりひとりの暮らし”を変えていく

 
大坂:本日は、『環境にも身体にもやさしい家事とは』というテーマでお話を伺わせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 
イーオクトさんは、まだ日本で環境問題があまり注目されていない90年代から産業界の環境問題解決に取り組み、2000年代からは“ひとりひとりの暮らしから、快適なサステナブル社会をつくる”というミッションを掲げ、北欧を中心に環境に配慮した製品を販売されています。大変お恥ずかしながら、その当時、まだ環境問題と言われてもピンとこなかったのですが、今では世界的な社会課題となっています。

 
髙橋:日本のGDPを支出面から見ると、最も大きいのは家計支出(個人消費)で、50%以上を占めています。現在、日本の総人口は、約1億2350万人。今は1〜2人暮らしが増えているから世帯数でいうと約5000万世帯くらい。これは非常に大きな数字です。この家計支出の内容が少しでも良い方向に向かえば、日本も一気に環境先進国に変われるのです。ならば、見て見ぬふりをせず “ひとりひとりの暮らし”から変えていこうと。90年代から環境先進国スウェーデンと関わり、そう考えるようになりました。

 
大坂:ミッシェルは、訪問先のご家庭にあるお掃除道具や洗剤を使って、年間約5万件のサービスを行っていますが、環境に配慮した製品を選ばれているお客様は、まだまだ少ないというのが現状です。

 
髙橋:それは売り場の問題も大きいと思います。洗剤1本買うのにわざわざ遠くまで行かないでしょ?近所にその選択肢がなければ問題意識があってもなかなか購入にはつながらない。私たちも販路を拡げる努力を続けているけれど、全国へ行き渡らせるまでには至っていないというのも事実です。
 

 
大坂:それはおっしゃる通りかもしれませんね。身近にあれば気軽に手に取ることができますから。他に拡がらない要因があるとすれば、ナチュラル系の洗剤は、環境にやさしいけれど、汚れにもやさしいという点でしょうか。特にサービススタッフは、時間内にきっちり成果を出さなければいけない。環境にやさしい方がいいとはわかっていても、汚れが思うように落ちないとか、落ちるまでに時間がかかってしまうと使いにくい……。

 
髙橋:それはミッシェルさんだけでなく、全世界で言われ続けてきたことですよ。落ちない洗剤で何度も何度もやるなんて、コストと時間の無駄使いだし、いくら環境にやさしいと謳っても支持されない。だから、機能性はとても重要です。

 
私たちの商品選びの基準は、“サステナブル、デザイン、機能”の三拍子が揃っていることです。まずは機能性。パフォーマンスが悪ければお金や時間が無駄になってしまうでしょう?デザインも可愛いとか格好いいという見た目だけの話ではなく、いかに使いやすくてシンプルに設計されているか。そしてサステナブル。どれだけ環境に負荷がかからないよう考えられているのか。この3つを重視して本当に自分たちがいいと思ったものだけを販売するようにしています。

 

大坂:なるほど。非常に分かりやすい基準ですね。
 

 
 

家事のプロが検証!
MQプレミアムモップとイージム洗剤の機能性

 
大坂:最近は環境にやさしい製品もかなり機能性が向上していると感じています。例えば、スウェーデンのMQプレミアムモップ。洗剤を使わず水だけで掃除することがこんなに気持ちいいとは思いませんでした。乾拭き、水拭きどちらにも対応でき大部分の汚れを拭き取れます。持ち手もしっかりしているし、長さ調節もできるので使いやすい。うちは犬を飼っているので、ケミカルなものを使わずフローリングの拭き掃除ができて重宝しています。しかも、独自開発されたクロス素材は、ヨーロッパ基準のAクラスを取得していますね。マイクロプラスチックの排出量が大幅に削減されています。

 
髙橋:日本は昔から雑巾を使って拭き掃除をする習慣があるけれど、大変だし、腰は痛いし、時間もかかる(笑)。だから掃除するのが嫌になってしまう。でも、時代は進化しているのだから、もっと機能性に優れたものを使えば、楽にきれいにできるでしょう?!私自身、MQの商品に出会ってからそう思うようになりました。

 

「水だけでできるサステナブル清掃」という考えのもと、スウェーデンで開発されたMQ・Duotexプレミアムモップ。当初は医療機関のプロ清掃用だったが、その機能性が認められ、今ではホテルやレストラン、学校などで幅広く使用されている。

 

MQ・Duotex クライメートスマート プレミアムクロス。グローブ型は細かい隙間まで拭き掃除ができてとても便利。

 
大坂:広い面積の拭き掃除は本当に大変です。希望されるお客様もいらっしゃるのですが、きちんと道具が揃っているかどうかで、仕上がりや所要時間もかなり変わってくるので、いいものはどんどん提案していきたいと思います。

 
⇒MQプレミアムモップについて詳しくはこちら

 
大坂:他にも、リニューアルしたイージムの洗剤についてお聞きしたいのですが……。

 
髙橋:今年春から再販する予定ですが、パッケージと容量が変わりました。主成分である酵素と水の力で汚れを分解する機能はそのまま継承しています。

 
大坂:酵素が配合された家庭用洗剤は他にもありますが、大きな違いは何でしょう?

 
髙橋:ベルギーのリアルコ社は30年以上、浄水処理場や食品加工工場などに独自の酵素洗剤ソリューションを提供している酵素のプロ。そのため、色んな酵素を配合して安定的に機能させる技術があるんです。この技術を駆使して家庭用に開発されたのがイージムです。

 

この春、新パッケージで再販されるイージム。左から、油汚れ用のキッチンクリーナー、家中どこでも使えるマルチクリーナー、排水溝の詰まりや臭い消し用のパイプクリーナー。

 
髙橋:イージムの酵素は1秒間に汚れを300万回も分解します。この力を利用して汚れを落とします。家庭の汚れの多くは有機物ですが、塊のままだと大きくてバクテリアが食べられない。だから、酵素の力を利用して汚れを分子レベルまで小さくすることでバクテリアが活性化、生分解(せいぶんかい)により最終的には水と二酸化炭素になって自然界へ循環していきます。

 
大坂:やはり、洗浄力が一番気になっていたのですが、うちのサービス技術チームがイージムを使った油の分解テストを見て、「すぐサラサラになった!」と驚いていました。

 
髙橋:私も初めて使った時、レンジフードの油汚れがサラサラになったのにはビックリ。分解と言えばパイプクリーナーも凄いんです。

 
一般的なパイプクリーナーは界面活性剤が主成分で、剥がした汚れはそのまま下水へ流れていきますが、イージムは流した後も酵素が汚れを分解し続け、さらにバクテリアの生分解も活性化し続けます。環境に負荷をかけないばかりか、自然界へポジティブなインパクトを与える、つまりは自然の浄化作用を促進させる“サステナブル洗浄”です。

 
社内でもドッグフードを排水管の汚れと見立てて、他社のパイプクリーナーと3つ並べて分解実験してみましたが、丸2日経ってもイージム以外は全然分解されなかったんです。これには私たちも本当に驚きました。

 

 
大坂:なるほど……。実際、流した先までどうなっているか考えが及んでいませんでした。やはり、ちゃんと知識を持って製品を選ぶことが大事ですね。

 
他にも泡立ち問題があって、私たちは無意識に “泡立ち”を求めてしまいますが、先日の油の分解テストを見させていただいて、「泡が立たないと汚れが落ちない」という思い込みも変えないとダメだなと(笑)。

 
髙橋:日本はスポンジを使うから泡立ちを重視するんじゃない?でも、泡で汚れを落とすわけじゃない。イージムは汚れにシュッと吹きかけて分解を待つだけ。ゴシゴシしなくていいから楽ですよ。機能レベルは格段にいいと思います。

 
大坂:吹きかけるだけなので、手が入りにくい細かな隙間やディスポーザーにも使えますし、99%天然由来成分なので、小さいお子さんやペットのいるお家でも安心ですね。強い洗剤は素材を傷つけるリスクもあり極力使用を控えたいので、洗浄力、安全性、サステナブルと三拍子揃った洗剤は、多くのご家庭で強い味方になると思います。

 
髙橋:プロは洗剤に触れる頻度も高いので、健康への心配もあるでしょう?昔は灰汁を洗剤として使ったり、ヘチマをスポンジの代わりに使ったりして、最後は必ず自然に返るもので成立していた。それが戦後一気にケミカルなものに取って替わり、家そのものが不健康になってしまったと感じています。ライフスタイルや食生活が変化しているので、もちろん昔のようには戻れないけれど、少しでも健康な家を取り戻したい。そう願っています。

 
大坂:色々試した結果、環境にやさしい製品も充分サービスで使えることがよく分かりました。まず、お客様窓口であるマネジャーたちにも使ってもらい、機能性を実感してほしいと考えています。

 
 

環境先進国スウェーデンは
自然を“共に生きるべき存在”として捉えている

 
大坂:スウェーデンのライフスタイルについてお聞きしたいのですが、家事に対する考え方は日本とかなり違いますか?

 
髙橋:そうねぇ……。ひとことで言えば、“ざっくり”かしら(笑)。ブラシ1本で何でもササっと洗っちゃう。本当にざっくりしていると思います。日本人はスポンジでピカピカになるまで洗うでしょう?完璧にやろうとすると、精神的にも時間的にも負担になってしまうと思うの。特に働く女性にとって、これ以上負担が増えるのはよくないわよね。

 
大坂:日本は全てがToo much なのかもしれません(笑)。

 

 
髙橋:日本にはライフスタイル系の雑誌がたくさんあるでしょ。隅々まできれいな暮らしが、女性にとっての美徳のように思われているけれど、時々、鬱陶しいと感じることがあるの(笑)。だって、それを読んだ女性たちに意味のない劣等感や、心理的な負担を植え付けているんじゃないか?と思うから。そもそも同じようにやる必要もないし、できないならできる人に頼んだっていい。そんな昔ながらの考え方から解放されないと、先々息苦しくなるんじゃない?自分にとって何が一番心地いいのかをもっと突き詰めていくべきだと思います。

 
大坂:相変わらず家事負担が大きいのは女性ですね……。スウェーデンでは、男性もしっかり家事をされますか?

 
髙橋:もちろん男性だってちゃんと家事や育児をやりますよ。それは、老若男女、誰にでも“公平に生活する権利がある”という考えからきていると思います。民主主義の奥深さが違うというのか、当然、男女平等だし、教育も大学までみんな無償、どこに住んでいても同じレベルの医療サービスが受けられる。自由と平等を重視する社会なんです。

 
大坂:日本とは全く違いますね。では、そんなスウェーデンがなぜ環境先進国になったのでしょうか?

 
髙橋:OECD加盟国(※1)の中で森林比率の高い国ってどこだか分かります?実は1位はフィンランド、2位がスウェーデン、3位が日本なの。知っていましたか?

 
大坂:えっ、全然知りませんでした。そうなんですか?すごく意外です。

 
髙橋:そうでしょう?!日本は身近にたくさん森があるのに、「森に行こう!」とはあまり考えないし、心理的な距離がある。一方、スウェーデンの人たちは、森や湖によく遊びに行きますが、これは自然と深くかかわってきた歴史と、その中で育まれてきた思想に関係しています。例えば、森を散歩してキノコやベリー類を自由に採取したり、フィーカやピクニックの場に使ったりしますが、森を単なる資源として捉えるのではなく、共に生きるべき存在として捉えている。この思想は声高に叫ばなくても、誰にでも存在しているように感じます。スウェーデンには自然享受権(※2)という法律がありますが、いきなり成立したというよりは、長い間に育まれてきた慣習が法律化されたという感じです。

 
日本では、森は誰かのものという感覚でしょ?勝手に入ってキノコを採ったり、キャンプをしたりできないけれど、スウェーデンでは誰でも自由に享受する権利がある。立ち入り禁止の真逆の哲学だと思います。だから、この先も自分たちのライフスタイルが壊れないよう、国民の中に“自然を守る”という意志や共感があるのです。とはいえ、スウェーデン人がいつも環境問題について語っているわけではく、意識しなくても自然にやっているし、暮らしの中に組み込まれている。結果、国や自治体、企業の姿勢もその方向へ向かうのだと思います。

 
大坂:なるほど。環境問題に対する意識の差は、個々の自然に対する捉え方や思想の違いからきているのですね。確かに日本は自然との間に距離感があるかもしれません。特に都心で生活していると身近に感じる機会が少ないと思います。

 

 
 

プロとしての役目は
“家事の存りたい姿”を提案すること

 
大坂:ミッシェルは、お客様のご要望に合わせる“フルオーダーメイド型”のサービス設計を得意としているのですが、今日のお話を伺って、自分たちが本当にいいと思った商品や道具をもっと提案していくべきだと感じました。そうすることで、お客様にもスタッフにも安心・安全で、環境にもやさしいサービスにできることが分かりました。

 
髙橋:健康な家、健康な地球を取り戻すために何をしたらいいか、何を使ったらいいのか。ミッシェルの意志と、サポートできることを冊子やメッセージカードなどで伝え続けることだと思います。そうすれば、きっと気づく人、興味を持つ人はおいでになると思いますよ。家事代行の役割は、これから先の“家事の在りたい姿”を提案することではないでしょうか。

 
大坂:本当にそうだと思います。たくさんの生活を見てきた家事のプロだからこそ、提案できることがたくさんあります。髙橋代表、本日は貴重なお話をお聞かせいただき、大変ありがとうございました。

 

(※1)OECD
OECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパ諸国を中心に日・米など38ヶ国の先進国が加盟する国際機関。国際マクロ経済動向、貿易、開発援助といった分野に加え、持続可能な開発、ガバナンスといった新たな分野についても分析・検討を行っている。

 
(※2)自然享受権
土地の所有者に損害を与えることなく植物や動物に敬意を払って行動する限り、すべての人にあらゆる土地への立ち入りや自然環境の享受を認めるという個人に与えられた権利。

 
 

【取材協力】
イーオクト株式会社

1990年、イーオクト代表・髙橋百合子氏が、環境先進国スウェーデンより「リサイクル社会を実現するための環境機械」の輸入販売権を獲得し事業開始。以来、「ひとりひとりの暮らしから、快適なサステナブル社会をつくる」をミッションに掲げ、北欧やドイツをメインに、サステナブル、デザイン、ファンクションと三拍子揃った製品を輸入卸販売、また、直営のサステナブルショップ「エコンフォートハウス」(渋谷区神宮前)を運営している。
 

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