もっと自由に、柔軟に。
インテリア雑貨を楽しむ暮らし。
せんせい:作原文子
さくはら ふみこ さん プロフィール
インテリアスタイリスト。岩立通子氏のもとで3年間アシスタントを経験した後、1996年に独立。主に雑誌、カタログ、TV-CM、エキシビション、ショップディスプレイなどのスタイリングを中心に活動。2007年には「恋するマドリ」で初めての映画美術にも関わる。手掛ける雑誌は、「エル・デコ」「カーサブルータス」などのインテリア誌、「Figaro japon」「Vogue Nippon」などの女性誌から「ブルータス」「Huge」「メンズノンノ」などの男性誌まで幅広く、日本のインテリアスタイリストとして第一線で活躍。リアルな生活感を持たせつつ、柔軟な感性を活かした独自のミックス感は、男性女性問わず定評がある。
ファッションのようにインテリアを楽しむ
「素敵なインテリアで、自宅を心地よい空間にしたい」とは誰もが思うこと。けれども、身につけるものには気を使っても、家の中のことは、つい後回しになってしまって・・・という人は少なくありません。雑誌・広告・映画などで活躍し、その独自のミックス感で人気を集めるインテリアスタイリストの作原文子さんは、そんなライフスタイルの中の「ファッションとインテリアの価値のバランスを整えたい」と語ります。
「たとえば女性が外へ出て人に会うとき、洋服のおしゃれに『これでいいや』と妥協することはほとんどありませんよね。ところがインテリアとなると『どうせ見えない家の中だからいいや』と考えてしまいがちです。ファッションとインテリア、そして食は、ひとりのライフスタイルの中でリンクしているものなのに、ファッションだけにお金をかけるのではもったいない。自分のためのささやかな贅沢として、インテリアにもお洋服と同じようにアンテナを張ってみると、毎日がもっと楽しくなりますよ」と作原さん。
しかし、いざ模様替えをしたいと思っても、大きな家具だと買い替えるのに躊躇したり、値段を気にしてしまいます。気軽にお部屋のスタイリングをはじめるにはどうしたらいいのでしょうか。
「手持ちのものが9個あったとしたら、そこに何か1個でいいから、興味を持った雑貨を買ってみて、プラスするだけでいいんです。組み合わせることで、必ず今までとは違う新鮮な空間が生まれます。アクセサリーをお洋服に付け替えてみるのと同じような感覚で、小さな雑貨を変えてみることから楽しんでみてもいいですね」なるほど、それなら気軽にできそうです。
スタイリングにルールはない
「スタイリングに『こうしなければいけない』という決まりはないんですよ」と作原さんはいいます。「私はいつも『組み合わせることで生まれる良さ』を大切にしています。インテリアを選ぶ価値をブランドや値段に置くのではなく、たとえば100円と 100万円のモノが心地よく共存できるようなスタイリングが素敵だな、と思うんです。実際にそのモノの値段を聞かなくても、良いものはいいですよね。組み合わせてみて、空間が魅力的に見えればそれでいい。雑誌やカタログで私のスタイリングを見てくださった人が、そんな自由な楽しみ方を、アイテムを選ぶときのエッセンスにしてくれたらうれしいですね」
作原さんいわく、インテリアアイテムは使い方を限定する必要もないのだそう。
「たとえばカーテンを買わなくても、シーツで気に入ったものがあるんだったら、それをカーテン代わりに使えばいいし、かわいいゴミ箱がないと思った時、かわいいバケツがあったらそれを使えばいい。テーブルセッティングでも、ナプキンリングがなければ小さな植物でキュッと巻いてみるとか。イスに気に入ったリボンを巻いてみるだけでもいいんですよ。大それたことではなくて、ちょっとした発想の転換で楽しんでほしいです」
物の「佇まい」や「物語」に耳を澄ます
いつでもスタイルにとらわれず、自由に物を選び、意外な組み合わせを活かすことで、商品の魅力を引き出している作原さん。それでは作原さんがスタイリングに使うインテリアアイテムをセレクトするときのポイントは、どこにあるのでしょうか。
「物を選ぶときの基準は、もちろんその雑誌の読者やテーマ、広告の場合はメーカーやブランドの世界観を活かすことを第一に考えますが、パッと見て、その物が持っている『佇まい』を感じながら、それを大切に決めることが多いですね。実際に空間に置いてみたときに、その佇まいがどう生きてくるかも想像しています」
私たちがモノを選ぶときにも、自分の部屋に置いたときの佇まいを想像して選ぶとよいと作原さんはいいます。そしてその物が持つ背景を知ることも、お気に入りのアイテムに出会うポイントなのだとか。
「たとえばお皿を一枚買うときに、そのお皿を作った作家さんのことをお店の方にちょっと聞いてみるだけでも、ひとつの器の中に10の物語が生まれてくると思うんです。その食器の背景を知ることで、使うときの愛着もわいてきますし、食器が作られた土地に行ってみたいと夢がふくらんだり、その雑貨からはじまる出会いが、どんどん広がっていくんですよ」
作原さんがふだん愛用しているお気に入りの食器を見せていただくと、そこからも「佇まい」や「物語」が感じられるようでした。(下写真参照)
「このお皿は、私が大好きな家具のアーティストが作った食器です。ピート・ヘイン・イークという、廃材の木をデザインに変えている家具作家のものです。すごく使いやすいんですよ。その下にあるのはアスティエというパリの老舗で作られたものです。これはアレクサンドルという顔のレリーフがポイントのシリーズです。
それからこちらの和食器は、岩本忠美さんの漆の器です。漆というとふつうツヤのあるものが多いのですが、岩本さんの作品はマットでカーキ色など絶妙な色遣いが特徴です。漆の食器は、普段はしまい込んでお祝いのときにだけ登場する、というイメージがあると思いますが、普段使いをしたくて、日々使っています。使っていくうちにどんどん色も変わって味も出るし、軽いんです。ガシャガシャ洗っています(笑)。急須は村上躍さんの作品で、手びねりでひとつひとつ作られたものなんですよ」
ひとつひとつの食器の作家や背景の物語を愛しながら、肩肘張らずに自由に使いこなしている作原さん。ナチュラルで飾らない人柄と、モノへの自然体な向きあい方と同様に、そのインテリアスタイリングもまた、勝手な思い込みにとらわれることなく、もっと自由にナチュラルに、日々の暮らしを楽しんでほしいと、私たちに伝えてくれているようです。
フレームを買わなくても針金のバスケットを壁にフックで引っ掛ければ、それだけで表情が出ます。アクセサリーを掛けたり、写真やポストカードを飾って。
2010 (C) IDEE CO.,LTD. All right reserved.
photo by Taro Hirano
Styling by Fumiko Sakuhara
古い引き出しをダイニングにそのまま置き、テーブルセッティングを入れてみたらいかがでしょう。パッと取り出せて、見た目もかわいいです。
2010 (C) IDEE CO.,LTD. All right reserved.
photo by Taro Hirano
Styling by Fumiko Sakuhara
作原さん愛用の食器たち。ピート・ヘイン・イークのお皿(上)と、アスティエのお皿(下)。
岩本忠美の漆器(両方)と、村上躍の急須。
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