変化する自分と家族を見つめて。
住み処を流動させるという価値観。
せんせい:馬場正尊
ばば まさたか さん プロフィール
建築家(Open A 代表/東京R不動産ディレクター)1968年佐賀県生まれ。早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2002年Open A を設立し建築設計、都市計画、執筆などを行う。主な作品として、運河沿いの倉庫をオフィスに改造した「勝どきTHE NATURAL SHOE STOREオフィス&ストック」。オフィスを集合住宅に改造した「門前仲町のオフィスコンバージョン」。茨城県守谷市に「郊外の小さな農家」をテーマにした住宅を設計、日本橋コレドの公開空地のリ・デザインなど。著書に『R the Transformers/都市をリサイクル』、『POST-OFFICE/ワークスペース改造計画』など。都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」を運営。東京のイーストサイド、日本橋や神田の空きビルを時限的にギャラリーにするイベント、CET(Central East Tokyo)のディレクターなども務め、多角的な行動で都市に関わっている。
新しい考え方をもつ世代が台頭している
家族を持ったら土地を買い家を建て終の棲家を得る。それが理想の生き方である。世の中にはそんな観念がありはしないでしょうか。しかし昨今その観念が徐々に変わりつつある、と語るのは建築家の馬場正尊さん。
都心の廃墟ビルなど機能不全に陥った建物の数々を、オフィスや住居として甦らせ、その活動から派生して、ユニークな味わいをもつ物件ばかりを集めた不動産サイト「東京R不動産」を発起。独自の価値観で新しい居住スタイルを提案しています。
「戦後50年は、無理してでも土地と家を持って、定住することに安心する風潮が続いたと思います。でも現在、住宅ローンのために働く親の姿を見てきた僕らの世代が、家を持つ番になった。僕は土地と家に縛られる生き方に疑問を持ってしまう。お客様も同じ考えの人が多いですね。いまは考え方も多様化していて、僕らの世代には、家を買っても終の棲家にするつもりのない人が増えているんです。『乗換駅』のような感覚で、ライフスタイルと家が合わなくなったらその家は売って次へ移る。そんな風に家を流動資産として考える時代がきていると思います」
都市を住みこなすということ
「人生には常に予想外の変動があるし、住環境もその時の自分や家族の状態に応じて変えていくべきだと思います。値段の高い『終の棲家』を買ってしまって、その家に自分を無理に合わせるようになっては本末転倒ですよね」
馬場さんは昨年秋に千葉の房総に家を建て、いまはそこから東京都心のオフィスへ通っています。終電を逃したときなど、必要に応じて都心の賃貸マンションへ帰ることもあるという二拠点での生活です。「いまの自分」の状態に合わせた住環境に暮らすということを、実践しながら世の中に提案しています。いまの馬場さんが選んだ住環境とは房総でした。都心に勤めていては、房総はなかなか選択肢に入らなさそうですが、実は通勤時間は特急電車で1時間。交通網や通信が発達した現代では、住環境の選択肢も意外に広いと気づかされます。経済面でも東京に一戸建てなどを買ってしまうより随分安いそうです。馬場さんはそんな生活を「都市を住みこなす」と表現していました。
これからの理想の住み処は、どこにあるのか
「都市での暮らし方はより流動化するのでは」、そう気づいた馬場さんの周りには徐々にその予兆が見え始めているようです。
馬場さんの住む房総の家の隣はいまは野原が広がっていますが、そこには馬場さんの呼びかけで集まった人たちの家がもうすぐ建つそうです。施主は30~40代のサラリーマンで、ほとんどが東京と房総の二拠点生活の予定だとか。
「遠い世界の話のようですが、冷静に考えるとそうでもない。房総はすごく土地が安いから成り立っている部分もありますが・・・。みんな『確かに東京にずっと暮らしているイメージはないなぁ』と言っています。鼻の利く冒険心のある人たちは少しずつ気づき始めているんですよね」
いまの生活にあった住み処について既成概念にとらわれず、素直に、自分を軸にして考えてみては、と馬場さんは言います。確かに自分の家は自分で「創る」ことができるはずです。いまの自分のための住み処とはどんなものか、一度ゆっくり考えてみると何か新しい世界が見えてくるかも知れません。
湾岸の空き倉庫をオフィスに改造した『勝どき THE NATURAL SHOE STORE OFFICE』。巨大空間の中にガラスキューブが配置され、その周りのスペースは「半屋外」の感覚で使えるようになっています。
『Re-Know東日本橋』。廃墟のビルが住居やスタジオとして再生されました。
東京では多忙な毎日。馬場さんのオフィスには模型材料や資料があふれています。
路地裏に埋もれた小さな倉庫をリノベーションした、馬場さんの事務所『Open A』。この物件を探すプロセスの中で「東京R不動産」が生まれたのだとか。
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